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zoom RSS ご挨拶SS「長城の上で」(修正済再掲)

  作成日時 : 2007/12/22 20:02   >>

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「ここって南国だったんじゃなかったか‥‥‥」
 宮城に通じる長城の上に立ってつぶやく。魂の故郷でさえ滅多に見ない凄い雪が、古の遺跡からなる広い道をしんしんと埋めていた。予想外の展開だ。
 芯から冷える寒さに身を震わせながら、もう一度自分の姿を確認する。
 肩までのハニーブロンドの髪は、こちらについて速攻でまとめ上げバレッタで止めた。丸っこい体型のため露出の多い服装は苦手だが、藩国のパンフを読んで一念発起していた‥‥‥のは、この展開にうっちゃられた。まぁ、初めましてのご挨拶だからと念のため持ってきたスーツが、意外なところで役に立ったとしておこう。
 冗談みたいな丸眼鏡の奥の翠の瞳を忙しなく辺りに向けて、初めて目にする自国の風景を目に納める。
(っていうか、自国って言える場所が私にもできたんだ‥‥‥)
 牡丹雪舞い散る中、目を閉じて空を仰ぎ、自国、という言葉を噛み締める。感無量。感動にうち震えるが故だが、傍から見てれば危ない人かもしれない。
 とはいえ、自分のそんな様を客観的に見る余裕なんて、正直どこにもなかった。いっぱいいっぱいである。
 これから宮城に行って、藩王様や国の皆さんにご挨拶をするのだ。根が小心者なので、実はかなりビクビクしているのである。


 そもそもアイドレスが始まってから今まで、アクションを起こさずひたすらことの推移を見ているだけだったのも、その性格があってのことだ。加えて石橋を叩きまくった挙句に今ので痛んだに違いないと渡らないようなヘタレだ。未だにここにいることが自分で信じられない。
 ただ、小心者のヘタレにも、助けたい人はいる。ずっと昔も、それでヤガミの記憶データを探しにいく部隊に紛れたり、カウンターアタックでサックスを吹いたりしたことがあった。
 今回どうしても助けたいのは、水の巫女その人だ。大絢爛舞踏祭というオンラインゲームで、唯一ハッピーエンドに出来なかった人。あの場にいた一人として、あの祭に熱狂した一人として、2年越しできたようやくのチャンスにじっとはしていられなかったのだ。
 それともう一人は(というか一組は)まきさんとHIだ。ずっと彼方でことの推移を見てきたのだ幸せになってほしい。すべからく、恋する乙女にはハッピーエンドこそがふさわしい、それが自分の信条だ。


 アイドレスにおいて数は力、この言葉を信じるなら、自分にできることもある筈だ。ぶっちゃけ荷物や銃を担いで部隊にくっついていくだけしかできなくても、自分がその時そこにいることで、なにかの足しになるかもしれない。それだけでも、今までに比べたらずっと上出来だ。
 自分の些細な一言や行動が、またいつかのように大好きな誰かの命を奪うかもしれない。正直そのことを考えると、今でも凄く怖い。だけど。
 今度は間に合った、そう言ってくれた藩王様の言葉を思い出す。頬を両手でばしっと叩いて気合いを入れる。そうだ。間に合ったのだ。これはサーラがくれた、大事なチャンスだ。
「‥‥‥よし、いこう」
 足下に置きっぱなしだった荷物を取り上げる。まずはご挨拶、それからすぐにやってくる作戦に備えて。そして、その後は? まだ今は、見当もつかない。
 自分にとってはまだなにもかも始まったばかりの新しい世界で、少しずつやれることを探していこう。そう心に決めて、遠くに見える宮城までの道をしっかりとした足取りで歩き出した。

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