ちひろ@わかばのリワマヒ日記帳

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zoom RSS 【中編SS(希望)】とある旅人による、リマワヒ観光記(まだまだ途中)

<<   作成日時 : 2008/01/29 20:19   >>

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 さわやかな鳥の声で目覚める……というのは、旅先の醍醐味の一つだと思う。特にこうした南国では、普段の生活では聞き覚えのないような鳴き声が耳を楽しませてくれる。私はなおもぐずぐずとふかふかの布団に埋もれていたが、遠く聞こえてくる外のざわめきが活気を帯びてくるに及んで、えいっと勢いをつけて起き上がった。微かな疲労感がかえって心地よく感じるのも、旅先ならではだろう。
 昨夜は、この国に着いたばかりだというのに楽しいひとときを過ごしたのだ。ゲート前で私を出迎えてくれた人たちが管理局前で待ちかまえていて、手続きを終えた私はそのまま彼らの歓待を浴びるように受けることとなった。
 今思い出しても楽しい夜だった。そこがどこなのか私にはよく判らなかったが大きくて立派な広間のような場所に連れてこられて、リワマヒ名物だという料理が次々に運び込まれた。申し訳ないとひたすら恐縮する私に彼らは笑いかけ、こうして宴を楽しむきっかけを与えてくれてありがとう、などと逆にお礼を言われる始末だった。
 宴は深夜まで続き、入れ替わり立ち替わりいろんな人物が次々と私に声をかけていった。昨日一晩でどのくらいの人と会ったのか、途中から数を数えることも諦めたほどだ。不思議な踊りを見せてくれた人もいた。歌を歌ってくれた人もいた。ただの旅行者であるはずの私を、彼らは国賓ででもあるようにもてなしてくれたのだ。
 そうして、いいから自分の家に泊まっていけと言ってくれた人々と別れ(さすがにそれは、好意に甘えすぎのような気がしたのだ)、このリワマヒホテルに荷をほどいた訳なのだが。
 昨日の宴会で食べ過ぎたせいだろう、お腹はあまりすいていなかった。朝食はスルーすることにして、私は昨日の宴の最中に贈られた服を身につけた。この国の季候に合わせたのだろうゆったりとしたズボンをはき、羅紗織りの美しい腰布を腰に巻く。さすがにこの国の人たちのように上半身裸になるのはいささか恥ずかしく、考えた末に半袖のワイシャツをまとうことにした。ちょっとどころかかなり変だが、まぁそれも良いだろう。
 実は、昨日知り合いになった子供が、遺跡まで案内してくれることになっているのだ。時計に目を落とすと、もうすぐ待ち合わせの時間だった。高床式のコテージを出て、回廊を通り本館のロビーへと向かう。
 角を一つ曲がると、逆方向から来たやはり滞在客らしい少女とかち合った。この国の服ではなくどこかの制服のようなものを着た、背は高いがどこかあどけない顔をした可愛い娘だ。奈津子ー奈津子ー最強の子ーなどという、一風変わった歌を口ずさんでいる。
「こんにちは」
 なんとなく声をかけると、彼女は歌を止めてにっこりと笑みを返してくれた。
「こんにちは! 昨日来られた方ですよね?」
 私がこのホテルに投宿したのは昨日の深夜のことなのだが……まぁ、ああいったフレンドリーな人々なればこその、情報網なのかもしれない。
「ええ。お嬢さんも、ご旅行で?」
「迷子です」
「は?」
 思ってもみなかった返事に、思わず聞き返してしまう。彼女はちょっと恥ずかしそうに背を丸めた。
「えっとあの、気がついたらここにいて……でも、この国の皆さん親切にしてくださいますし、室賀さんも仲良くしてくれるから」
「そうなんですか」
 彼女はきっと、自分でも気がつかないままゲートを越えてここに来てしまった人なのだろう。事故といっていいような話だが、まれにはそういうこともあるのかもしれない。
 一方で私も、この国の人たちの親切な部分は、昨日骨身にしみるほど理解した。困ってはいるかもしれないが、ここでなら確かに、誰でも……たとえ迷子でも生活はしていけそうだ。
「確かに、この国の皆さんは暖かくていい人達ばかりのようですね」
 そういいながら、ふと室賀さんとは誰だろうと考える。彼女はいっそう笑顔になって、はいっと元気よく頷いた。
「私、斉藤奈津子っていいます。よろしくお願いします」
 勢いのいい自己紹介に、こちらも笑みを誘われる。応えて名乗ろうとした私の背に、不意に衝撃が走った。
「遅いよ、先生!」
「っと……ああ、ごめんごめん」
 いつの間にかロビーに着いていた。私の案内役を買ってでてくれた少年、リオくんが、私の背に飛びついたまま叫ぶ。元気のいい子供だ。昨日も、他の子たちと一緒に管理局まで走ってくれた。
「先生、なんですか?」
 私への呼びかけに、奈津子さんは目を丸くしている。思わず苦笑を漏らして、私は首を振った。
「私はそんな大それたものじゃない。これはまぁ、単なる行き違いですよ」
 宴の席で訪れた先のことは必ず紀行文として残すのだと口を滑らせてから、急に皆が私のことを先生と呼ぶようになった。単なる下手の横好きで、本物の作家ではないのだと言ったのだが、その時には手遅れだったという事で。
「あ、なっこちゃんだ! みんな待ってるよ、早く行ってあげなよ!」
 私の背によじ登ったままの状態で、リオくんは奈津子さんに気づくと大声を上げた。元気がいいのはいいのだが、このままでは私の三半規管がおかしくなりそうだ。
 奈津子さんは大きく目を見開いてから、大変大変と言っていきなり走り出す。途中で荷物を運ぶベルボーイを吹っ飛ばしかけながら、その背中はあっという間に入口の扉の向こうに消えた。
「みんな待ってるって?」
 彼の腕をとって背中から下ろしながら、私はリオくんに問いかける。
「なっこちゃんは、俺たちの遊び相手なんだ」
 自慢げにリオくんは胸を張った。なるほど、それは大いに納得のいく光景だ。彼女の持つ天真爛漫な雰囲気は、確かに子供に好かれるだろう。
「なっこちゃん、危なっかしいんだよ。俺たちが見ててやらないとさぁ」
「……そうなのかい?」
 やれやれと大人びた様子を装って首を振るリオくんは、それでも嬉しそうだ。微笑ましく思いながら、私は彼女の消えていった扉に視線を向ける。
「で、先生。遺跡を見に行くんだよね。遺跡っていってもいろいろあるけど、どこが見たいの?」
「ん? ああ……そうだね、じゃあサカサコタツ遺構に連れて行って貰えるかな」
 見上げてくる視線に少しだけ身をかがめるようにしながら、私はここに来る前に頭の中に入れておいたリワマヒ国の地図を思い出す。 このホテルから近いのはアキハバ遺跡街といわれる遺跡の方なのだが、いけるのなら初日に遠い方へいっておきたかった。
「オッケー先生。じゃ、いこうよ」
 びしっと親指を立てて、リオくんはにこりとにやりの中間くらいの笑みを見せた。心意気はともかく、彼もまだあどけなさが全てを微笑ましくさせる年頃だ。
「歩いていけないこともないけど凄く歩くから、タクシーで行った方がいいよ」
 そう言いながら、リオくんは早くも小走りでロビーを横切っていく。痩せた背中に視線を向けて、私は彼を呼び止めた。
「リオくん、私は実はまだご飯を食べていなくてね。できたらおいしいものが食べられる屋台かなにかに連れて行って貰えると嬉しいんだが」
 育ち盛りの少年なら、一日に何度食べても食べ過ぎということはあるまい。屋台のようなところなら、彼も喜んで買い食いに応じてくれるだろうと思ったのだ。
 ちょっと不思議そうな顔で振り返った彼は、しかしすぐに満面の笑みを浮かべて頷いた。

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