ちひろ@わかばのリワマヒ日記帳

アクセスカウンタ

zoom RSS ストーリーによるAマホバリエーションその1 「リワマヒ国への長い道」1-1

<<   作成日時 : 2008/01/02 19:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

はじめに
「この作品はフィクションです。登場する人名地名等は全てセッションログをベースにしたちひろのオリジナルであり、実際の藩国や藩国民・地名などとはいっさい関係ありません」

 〜1〜

 目の前には緩やかな丘を上っていく長い道。左側は鬱蒼とした森、右手はまだ開拓途中のような更地。そうして遥か天の高みから冬の太陽が柔らかな日差しを投げていて、彼女はそこに独りきりだった。
「ここどこ‥‥‥?」
 迷ってる、わけではないと思う。ちゃんと地図も持ってるし、示された道を進んでいる‥‥‥筈だ。どうも見方があやふやみたいだという認識を、全力で意識の片隅に蹴りこんで、ちひろは足下に置いた荷物をよいしょと持ち上げてまた歩き出す。
 この旅、最初からなんだかケチが付きまくっている。本当だったら今頃はとっくにリワマヒ国について住むところも当座の仕事も確保して、試験に備えている筈だったのだが。
「過ぎた事言っても仕方なーい!」
 こうして知らない道をとぼとぼ歩く現状に軽くへこみかけた気持ちを、天を仰いでわーっと叫ぶことで吹き飛ばす。とにかくなんとしても、まずはこの先にあるらしい休憩所まで辿り着かなければ。こんなところで夜を迎えるのだけは、絶対にごめんだ。
 不意に、森の方からガサガサと音がした。
「!?」
 思わず固まる。音はどんどん近付いてくる。ひくっと喉の奥がひきつれた。
(森から出て来る何かっていったら、狼とか熊とかえーとえーとあとなんだっけっ?)
 パニクるあまりに逆にわりとどうでもいいことが頭をぐるぐる回り出す。足は地面にロックされたように動かないまま、微かに震え出す。眼鏡の奥の目を限界まで見開いて、ちひろは音の来る方向を凝視した。
「‥‥‥〜〜っ!!?」
 ガサガサッと大きな音が一際起こって、目の前にぬっと影が差す。産毛まで逆立つ感覚に、ちひろは声にならない悲鳴をあげて硬直した。
「あ〜、やっぱり人がいたよ。ラッキーだな、こりゃ」
「!?!?」
 150センチそこそこの身長のちひろには、30センチ近い上背の差はそれだけでも見上げるような形になる。この状況でのそれは、もはや巨人との接近遭遇に近い。
(た、た、食べ‥‥‥っ)
 冷静な時ならあるわけねぇだろと自分で突っ込むところだが、真っ白な頭はひたすら最悪な想像に突き進む。
 相手はふと動きを止めた。じっと探るような視線を向けられて、息を止める。
「‥‥‥まぁそりゃ驚きますよね〜、こんな森の中からぬって人が出てきたら」
 あはは〜っといきなり明るく笑われて、全身からふっと力が抜けた。改めて良く見上げれば、確かにその人はごく普通の人間だった。つんつんと起った短い金髪、背は随分と高く(もっとも自分より小さい大人に会う事は滅多にないけれど)、適度に筋肉の乗った体付きをした男の人だ。
 呑気に笑っている顔を見返していると、恐怖から逃れられた反動でむらむらと怒りが沸いてきた。こっちは死にそうに驚かされたっていうのに、笑うなんて‥‥‥!
「あの!」
「ええ、驚かせてすみませんでした」
 自分でもきつく聞こえる呼び掛けに、相手はぱたりと笑顔を消して、神妙な顔つきで深々と頭を下げてきた。後頭部から背中までがよく見えるほどの深いお辞儀に、言おうとしていた言葉が吹き飛ぶ。
「‥‥‥いえ、まぁ‥‥‥いいんですけど」
 そこまでされては、怒りをぶつけようもない。相手だって驚かそうと思ってやったわけではないのだ。
 そろっと上がった顔が、こちらの表情を伺っている。さすがにまだ笑顔にはなれずに、ちひろはせいぜいしかめつらしくしたまま、それに向かってうなづいた。
「私も、失礼しましたから。すみません」
 軽く頭を下げる。ぱちぱちとまばたきして、青年はにっと笑った。
「良かった。それでですね、実は俺、道に迷ってまして。リワマヒ国にいくにはどっちにいったらいいか、貴方ご存じですか?」
 多少照れたような笑顔でそんな事を言われ、ちひろは三度目を丸くして絶句した。


「いやぁ、地図を持ってる方とご一緒できるとはラッキーでした。道に迷って困っていたんですよ〜」
「私もラッキーでした、地図の読み方がいまいち判らなくて・・・(汗)。どこかに休めるところがあるって聞いたんですけど・・・」  
「いえいえ、地図があるだけで助かります、読むほうはお任せくださいな」
 島津と名乗った青年は、ちひろの持っていた地図を受け取って軽く眺め、迷いない足取りですたすたと歩き出す。なんだかほっとする思いで、ちひろはその後をついていった。
「はい、頼りにしてます」
 そんな風に言ってみる。少なくとも、たった一人で数ヶ月までは戦争まであった国へと向かう心細さは、完全に払拭されていた。目尻を下げるような笑顔をちらりと見せて、島津は歩きながら地図をもう一度広げる。
「えーっと、地図によれば、ここから15キロほど行かなければなりませんね・・・っと。雲行きがあやしくなってきましたね」
「本当ですね。早く歩かないとまずいかな」
 視線を上げれば、確かに指摘どおり行く手の空に黒い雲が広がっている。休憩所まではまだかなりある。そこまで辿り着けばいろいろやりようはあると思っていたが、このままでは確実に雨に見舞われる事になりそうだ。
「急ぎましょう、でも疲れたら言ってくださいね」
「はい」
 せめて民家があれば、電話を借りてタクシーに迎えに来てもらえるのだけど(ちなみに自分の携帯はとうの昔に電池切れで只の物体になっている)。
 少し足を早めた島津に小走りについていきながら、そんな事を思って辺りに視線を巡らす。と、彼が背負った荷物に吊り下げられている物が目に入った。
「‥‥‥あの」
「はい?」
「その携帯、使えるんですか?」
 恐る恐る訊いてみる。もし駄目なら、本気で走らなければならないだろう。
 島津は手慣れた様子で携帯を手に取り、にっこり笑う。
「使えますよ? そうだ、これでタクシーに来てもらいましょうか」
 彼の方からなされた提案に、ほっとして頷く。では早速、そう言って電話を掛け始めた島津の横顔を見上げながら、ふと思った。電話が使えるなら、どうしてもっと早く、自分と出会う前にでもそれを使おうとしなかったのだろう。
 出会った時の状況を思いだし、少しおかしくなる。確かにあの森の中までは、タクシーは来てくれないだろう。
「来てくれるそうですよ。どうします、それまでここで待ちますか?」
 そう言われて、ちひろはもう一度辺りを見回す。周囲には何もなく、行き違いようもない一本道。
「歩きましょう、島津さんがよければ」
「わかりました。俺は全然平気ですよ。そうそう、疲れたら無理せず言って下さいね」
 そんな風に言って、島津は先程までとはうってかわってのんびりと歩き出す。気遣いに感謝しつつ、ちひろはカバンを提げ直してその隣を歩き出した。優しくていい人だなぁ、と密かに思う。多少茫洋としてつかみどころのない面があるけれども、こちらをちゃんと気遣ってくれる。さっきは誤解して怖がったり怒ったりして、本当に悪いことをした。
「‥‥‥あの、島津さん。一つ窺って良いですか?」
「はいはい、なんです?」
 連鎖反応的に思い出した出会いの風景に、同時に感じた疑問も思い出す。そおっと声をかけると、島津は笑みを浮かべて首をかしげる。促す仕草に、ちひろは上の方にある顔を見上げた。
「なんで、あんな森の中にいたんですか?」
 そうでなければ、いくら自分だってそこまで驚かなかった‥‥‥筈だ。
 島津はぶつけられた疑問に一瞬真顔になって、それからまたにこぉぉっと笑った。照れをごまかしでもするように、短い髪を盛大にかき乱す。
「いやぁ‥‥‥実は俺、迷ったときは直進って決めてまして」
「‥‥‥はぁ」
 と、いうことは。
「ああっ、でも最初は普通の道だったんですよ!? いつの間にかそれが心細い道になって最後には獣道になっちゃっただけで!」
 なっちゃっただけって‥‥‥。
 誤解しないでね! というようにそんなことを言いつのる島津に、ちひろは多少引きつり気味ながら笑みを浮かべてソウダッタンデスカ〜、と相づちを打つ。はい、といい笑顔で答える島津。
(‥‥‥優しくていい人なのは間違いない。たとえ多少ぼんやりで変わってるようでも、間違いない、うん)
 なにげにそんな失礼なことを思いつつ、ちひろは持った荷物のストラップを密かにぎゅっと握りしめた。

 〜2〜へ続く

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ストーリーによるAマホバリエーションその1 「リワマヒ国への長い道」1-1 ちひろ@わかばのリワマヒ日記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる